2008.12.02 (Tue)
涼宮ハルヒの抱っこ
「寒いわね」
「どいてくれ」
いつもの部室にいるのは俺とハルヒだけである。
よって朝比奈さんの淹れてくれる心温まるお茶もない。
読書好きのサイレント・マジョリティーも存在しない。
にやけた面の超能力者も……まあこれはどうでもいいか。
「ちょっと! 息しないでよっ 耳に息がかかるでしょうが」
「よし少し状況を整理してみようじゃないか。ハルヒ。お前今どこに座ってる?」
「椅子」
「俺は椅子じゃねえ」
「団員は団長である私の盾であり、剣であり、椅子でもあるのよ」
「じゃあ古泉あたりの膝なんかどう――」
俺は途中で言葉を止めた。
伊達に色々と経験してきたわけじゃない。
殺気には人一倍敏感だ。
というか、こいつの場合は不機嫌さを全く隠そうとしないから誰でも分かるが。
「言わなくても分かるようになってきたわね。あんたは黙って私の椅子兼暖房になってなさい!」
「いてっ おいあんまり膝の上でごそごそするな。すでにお前の重みで足が痺れてるんだ」
「誰が重いですって!?」
「お前だよ。そして暑い。暖房があるだろ、暖房が。こんなもんの近くで二人してくっついてたら暑くてしょうがない」
「……誰と誰がくっついてるですって?」
「俺とお前だよ」
「言っておくけど、私はただ――」
ハルヒは言葉を切って突然立ち上がった。
スタスタと団長席に歩いていきドスンと座る。
「どうもお二人のところお邪魔してすいません」
にやけた男が入ってきた。
なるほど、こいつの気配に気づいて俺から離れたってわけか。
羞恥心くらいは人並みになってきたようだな。
「挨拶くらい普通にできんのか?」
「僕としてはいたって普通のつもりなんですが」
「遅いわよ古泉くん。有希にみくるちゃんまでなにやってるのかしら!? みんなちょっとたるんでるわねっ」
朝比奈さん、長門。
早く来てくれないと、強化合宿とか言い出しかねませんよ。
「ごめんなさいちょっと掃除当番で」
ここで俺は少し違和感を感じた。
なんとなく朝比奈さんの表情が演技っぽい。
そして部室に入ってきた瞬間、俺に向けられた視線がやけに生暖かい。
なんでそんなに「わかってますよ♪」的な目で微笑んでくるのだろうか。
……見てたのか? さっきまでの光景をおもいっきり覗いてたのか?
いや違うよな。違うと信じよう。違うに決まっている。
そんな俺の希望を長門が打ち砕いた。
部室に入ってくるなり俺に一言、
「……どちらかと言えば父娘のようだった」
さっそく朝比奈さんが淹れてくれたお茶を、古泉が吹き出した。
「ばれてたわね」
「ばれてたな」
またしても膝のうえには団長様が居座っていた。
あれから古泉がバイトで早退し、朝比奈さんも何か用事ができたらしくやはり早退した。
長門はしばらく突っ立ったままだったが、どうやら二人と同じくすることができたようで、部室を出て行った。
重苦しい沈黙が部室を包みこむ。
いや待て。
俺は何も悪くないじゃないか。
なんのつもりかは知らんが、あくまで俺は人間でありながら椅子扱いされた被害者じゃないか。
「あんたが気をつけていないからこんなことになったのよ!」
「どうやったらそんな結論になるんだ?」
「団長である私が気を緩ませているときこそ、団員は周囲の注意を怠ってはいけないのっ ちょっとは豊臣秀吉を見習いなさいっ」
「お前の上靴でもポケットに入れてろってのか? 冗談じゃないぜ」
「なによ? 団長であるこの私に逆らうっていうの?」
「ああ、もうこんなに近くにいるのにがなりたてるな! そんなに俺の膝が好きなら一生座ってろ!」
「あんたに言われるまでもなく一生座ってるわよっ」
「……え?」
「……あれ? あ、その違……」
その後、ハルヒはすっかりおとなしくなってしまったので、しばらく膝の上に乗せてやった。
それから下校時間になったから二人で帰った。
涼宮ハルヒの抱っこ END
「どいてくれ」
いつもの部室にいるのは俺とハルヒだけである。
よって朝比奈さんの淹れてくれる心温まるお茶もない。
読書好きのサイレント・マジョリティーも存在しない。
にやけた面の超能力者も……まあこれはどうでもいいか。
「ちょっと! 息しないでよっ 耳に息がかかるでしょうが」
「よし少し状況を整理してみようじゃないか。ハルヒ。お前今どこに座ってる?」
「椅子」
「俺は椅子じゃねえ」
「団員は団長である私の盾であり、剣であり、椅子でもあるのよ」
「じゃあ古泉あたりの膝なんかどう――」
俺は途中で言葉を止めた。
伊達に色々と経験してきたわけじゃない。
殺気には人一倍敏感だ。
というか、こいつの場合は不機嫌さを全く隠そうとしないから誰でも分かるが。
「言わなくても分かるようになってきたわね。あんたは黙って私の椅子兼暖房になってなさい!」
「いてっ おいあんまり膝の上でごそごそするな。すでにお前の重みで足が痺れてるんだ」
「誰が重いですって!?」
「お前だよ。そして暑い。暖房があるだろ、暖房が。こんなもんの近くで二人してくっついてたら暑くてしょうがない」
「……誰と誰がくっついてるですって?」
「俺とお前だよ」
「言っておくけど、私はただ――」
ハルヒは言葉を切って突然立ち上がった。
スタスタと団長席に歩いていきドスンと座る。
「どうもお二人のところお邪魔してすいません」
にやけた男が入ってきた。
なるほど、こいつの気配に気づいて俺から離れたってわけか。
羞恥心くらいは人並みになってきたようだな。
「挨拶くらい普通にできんのか?」
「僕としてはいたって普通のつもりなんですが」
「遅いわよ古泉くん。有希にみくるちゃんまでなにやってるのかしら!? みんなちょっとたるんでるわねっ」
朝比奈さん、長門。
早く来てくれないと、強化合宿とか言い出しかねませんよ。
「ごめんなさいちょっと掃除当番で」
ここで俺は少し違和感を感じた。
なんとなく朝比奈さんの表情が演技っぽい。
そして部室に入ってきた瞬間、俺に向けられた視線がやけに生暖かい。
なんでそんなに「わかってますよ♪」的な目で微笑んでくるのだろうか。
……見てたのか? さっきまでの光景をおもいっきり覗いてたのか?
いや違うよな。違うと信じよう。違うに決まっている。
そんな俺の希望を長門が打ち砕いた。
部室に入ってくるなり俺に一言、
「……どちらかと言えば父娘のようだった」
さっそく朝比奈さんが淹れてくれたお茶を、古泉が吹き出した。
「ばれてたわね」
「ばれてたな」
またしても膝のうえには団長様が居座っていた。
あれから古泉がバイトで早退し、朝比奈さんも何か用事ができたらしくやはり早退した。
長門はしばらく突っ立ったままだったが、どうやら二人と同じくすることができたようで、部室を出て行った。
重苦しい沈黙が部室を包みこむ。
いや待て。
俺は何も悪くないじゃないか。
なんのつもりかは知らんが、あくまで俺は人間でありながら椅子扱いされた被害者じゃないか。
「あんたが気をつけていないからこんなことになったのよ!」
「どうやったらそんな結論になるんだ?」
「団長である私が気を緩ませているときこそ、団員は周囲の注意を怠ってはいけないのっ ちょっとは豊臣秀吉を見習いなさいっ」
「お前の上靴でもポケットに入れてろってのか? 冗談じゃないぜ」
「なによ? 団長であるこの私に逆らうっていうの?」
「ああ、もうこんなに近くにいるのにがなりたてるな! そんなに俺の膝が好きなら一生座ってろ!」
「あんたに言われるまでもなく一生座ってるわよっ」
「……え?」
「……あれ? あ、その違……」
その後、ハルヒはすっかりおとなしくなってしまったので、しばらく膝の上に乗せてやった。
それから下校時間になったから二人で帰った。
涼宮ハルヒの抱っこ END
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